【3379】 ◎ チャールズ・ハンディ (大嶋祥誉:監訳) 『THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方 (2021/03 かんき出版) ★★★★★

「●マネジメント」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3427】 ジム・クリフトン/ジム・ハーター 『ザ・マネジャー
「●組織論」の インデックッスへ ○経営思想家トップ50 ランクイン(チャールズ・ハンディ)

経営論&人生論の名著『もっといい会社、もっといい人生』の新訳版。

THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方1.jpgTHE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方.jpg                『もっといい会社、もっといい人生.jpg
THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方』['21年] 『もっといい会社、もっといい人生―新しい資本主義社会のかたち』['98年]

 「英国のドラッカー」と称される著者による本書(原題:The Hungry Spirit,1997)は、あるべき資本主義を説いた経営論であるとともに、企業人のための人生論も語られている本です。以前に『もっといい会社、もっといい人生』(1998年/河出書房新社)として邦訳が刊行されていますが、今回はその23年ぶりの新訳版となります(約四半世紀を経て新訳が刊行されること自体が、名著の証しとも言える)。

 PART1「資本主義のゆがみを見つめる」(第1~3章)では、資本主義社会の問題や不安について考察しています。第1章では、資本主義における市場の限界について述べ、市場原理に基づく効率の追求は、社会全体に大きな歪みを生み出しかねないとしています。

 第2章では、効率の追求は、社会を一部の人には有利に、他の多数の人々には不利に傾斜させるとしています。第3章では、資本主義の欠点を直そうとしてそれ自体まで失ってはならず、資本主義は道具にすぎないものであり、人類が暮らすこの世界を救済する手段は、人間の心の中にしか存在しないとしています。

 PART2「自分の人生を見つめる」」(第4~7章)では、人生の目的は、世界を少しばかり良くすることでなくてはならないとしています。第4章では、これからの人生の在り方として、自分の人生の筋書きを自分 の手で書くことができる時代になるが、それには責任とモラルが求められ、また、企業にも個人と同様、その行動と運命に責任が求められるとしています。

 第5章では、人生の充足に至るまでには、「生存志向型」→「外部志向型」→「内部志向型」の3段階の心理学的な類型があるとしています。また、「正当な利己性」は誰もが持つべき権利であるとしています。第6章では、生きる意味を見い出すための4要素として、人生という旅の活力となる夢を持つこと、自分にとっての「十分」を知ること、崇高なものの味わいを経験すること、最後に、世界に貢献することで自分の人生を永遠化すること、を挙げています。また、自分の関心に基づく活動の仲間が新しい"家族"になるとしています。

 PART3「これからのまっとうな社会に向けて」(第8~10章)では、PART2で展開した考えを社会制度に当て嵌めて考察しています。第8章では、会社にとっての本当の目的とは何かを考察し、社会の一市民としての企業の在り方を探っています。

 第9章では、企業における市民性とは才能ある社員をどうまとめるかであり、そこには信頼というものが大きく関わってくるとしています。第10章では、自分自身と他者に対する責任感を育てる教育の必要性を説いています。

 そして、エピローグでは、企業と社会と人生の理想的な関係をどう構築していくかを考察し、未来の社会に起こり得ることを予測するとともに、人は誰でも心の中で、よりよい世界、より公正な世界を求めているので、世界は変えることができるとしています。

 本書において著者は、「正当な利己性」というキーフレーズをよく用いています。それは、個人としては「利己と利他とが調和した姿」であり、同様の姿勢を企業にも求めています。それにより「品位のある資本主義」が実現されるというのが著者の考えです。資本主義の限界を分析して「あるべき社会」を探るとともに、企業人にとってより良い人生とは何か、自らの人生をどう生きるべきかを説いており、人事パーソンに限らず、ビジネスパーソンに広くお薦めできる本です。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1